『大切なものほど、ちゃんとしまいたい。それも、飾るように』
それが、私たちの出発点でした。アクスタや缶バッジのような、厚みのあるグッズ。ただリフィルのポケットや箱に押し込むのではなく、一つひとつを丁寧に守りながら、いつでも眺められる形でしまいたい。
そんなリフィルを求めて、私たちはビニール加工一筋で歩んできた都内にある町工場の扉を叩きました。
たかがリフィル、されどリフィル。素材の選定から製造の全工程まで、すべてを国内で、丁寧に仕上げること。私たちがPVCリフィルでこだわってきたのは、そこでした。
量産効率を優先すれば、もっと簡単な作り方はあったかもしれません。それでも『大切なものをしまう』という一点にこだわるなら、任せられるのは長年ビニール加工に向き合ってきた日本の工場しかない。そう感じさせてくれたのが、今回ご紹介するKさんが代表をつとめる工場です。

この記事は、Kさんに直接お話を伺った内容をもとに構成しています。
白と透明、二つの塩ビの相性を整える

最初に持ち込んだのは、アクスタや缶バッジが収まるリフィルの図面でした。
伝えたのは、厚みのあるグッズが入ること、そして台紙を白、ポケットを透明にするというシンプルな組み合わせだけ。素材の配合や強度といった技術的な仕様までは指定していません。
「台紙を白にするのはいいね。」
Kさんは図面を見ただけで中身が主役に見えるようにしたいというこちらの意図を汲み取り、即座に賛同してくれました。けれどシンプルであるがゆえに、この組み合わせには素材同士の相性という難しい課題が潜んでいました。
イレールのPVCリフィルは、白い台紙とクリアなポケット、二つの塩ビシートからできています。

透明シートに使っているのは、日本のメーカーが手がけるPVCシート。
Kさんはこの透明シート側の配合データを数値で取り寄せ、同じく日本のメーカーである台紙のメーカーに、まったく同じ配合で作ってもらうという手順を踏みました。二つの素材の性質を、そもそも揃えてしまうという発想です。
工夫は配合だけではありません。艶のある面同士がぴったり密着すると、空気の逃げ場がなくなり貼りつきやすくなります。透明のポケット材はもともと艶のある仕上げですから、そのまま白い台紙と重ねれば密着してしまう。
「透明と透明はくっつきやすいけど、透明と白がくっつきにくいように白い台紙には空気が入るように仕上げてますから。」

だからこそ台紙の裏面には、あえて艶を消したエンボス加工を施しています。目に見えないほど細かい凹凸が空気の層をつくり、密着そのものを防ぐ。
「このシロは特殊なんですよ。」
とKさんが言うように、他に類を見ない仕様なのだそうです。
そしてこの気配りは、素材を選ぶ瞬間だけで終わりません。
どのくらいの期間、どんな場所に置いておくか。部屋の温度差や湿度によって、シートの状態は少しずつ変化していきます。箱に入れたまま何日置くか。そんな当たり前のようなことにまで気を配りながら、販売を行うナカバヤシ社と一緒になって在庫を管理してもらっています。
国内のメーカーが配合データを数値で開示し、それを別のメーカーが読み解いて再現する。そんなやり取りが実現できるのも、長年ビニール素材と向き合い、信頼関係を築いてきた国内メーカー同士だからこそです。
もちろん、どれだけ対策をしても、時間の経過や使用の中での劣化により、シートどうしが貼りついてしまう可能性がなくなるわけではありません。それでも、そうした変化まで見越したうえでの、派手さのない、けれど手放せないこだわりの積み重ね。それが、価格の向こう側にある価値だと私たちは考えています。
手作業だから成立する形

市販のPVCリフィルの多くは、PVCシートにスリット(切り込み)を入れて、張り合わせた作りのものがほとんどです。つまりポケットと台紙、それぞれ1枚のみのPVCシート同士を貼り合わせるだけなら、作業はもっとシンプルだったはずです。
けれど私たちはあえて、「蓋」を一枚ずつ溶着する、手間のかかる作りを選びました。ポケットの数だけ蓋があり、その一枚一枚を正確な位置に手作業で溶着していく。気の遠くなるような手間です。
「これはこの商品の価値観の問題じゃないですか。中に入れるものが、大事なものを入れる人にとっては、絶対蓋付けた方がいい。」
複雑な形をした蓋の部分は専用の抜き型で型抜きし、まっすぐな形の身の部分は型を使わずシンプルな裁断で仕上げます。

こうしてカットされた薄いビニールシートを一枚だけつまみ上げる。
単純に思えるこの工程さえ、ビニールどうしが密着してしまうため、今のロボット技術をもってしても一枚ずつ剥がすことはできません。どれだけ機械化が進んでも、人の手にしか担えない領域もまだまだあると、Kさんは話してくれました。

溶着には機械(ウェルダー)を使いますが、今も自動化はされておらず、両手両足を使って人がその機械を操るアナログな作業がそのまま残っています。足でスイッチを踏み、圧着の感触と音を頼りに、数秒でしっかり接着できたかどうかを見極める。マニュアルやセンサーではなく、作業者の感覚がそのまま品質になる仕事です。

さらに重たいグッズを入れてもバインダーのとじ穴が広がってしまわないように、現在の商品では、台紙の裏側に透明のPVCシートを、とじ穴部分に沿って上から下まで幅20ミリで溶着する補強を加えています。この補強を正しい位置に溶着するための型の幅は、ぴったり20ミリ。対して裁断されたシートは21ミリ。その差、わずか1ミリの中に位置合わせの精度のすべてが収まっています。
この1ミリを守れるかどうかは、40年以上この仕事に携わってきたKさんの勘によるところが大きいといいます。
任されているのは、長年ものづくりに向き合ってきたベテランの職人たちです。
ミリ単位の精度も、圧着の感触を聞き分ける感覚も、一朝一夕には身につきません。効率だけを考えれば、ほかの選択肢もあったはずです。それでも私たちがこの工場にこだわり続けているのは、こうして積み重ねられた手仕事こそが、商品の価値そのものだと考えているからです。
大切なものを大切にしまう

「このリフィルを手に取ってくれる人は、グッズに対して思い入れがある人なんじゃないですか。ポケットの並びの何番目に入れたいなとか、自然にそう考えると思いますよ。」
大切なキャラクターや思い出の品を、ふさわしい形で残して、いつでも眺めていたい。そう思って手に取ってくれる人がいるからこそ、私たちは見えないところにまでこだわりを積み重ねてきました。
配合を揃えた二枚のシートも、裏面のわずかな凹凸も、とじ穴部分の補強も、すべては「見せる収納」と「守る収納」を両立させるための工夫です。
ireluのPVCリフィルは、そんな一枚一枚の手仕事から生まれています。
▼イレールPVCリフィルの商品ページはこちら
https://irelu-products.com/product-category/binder-pvc-refill/
取材日:2026年7月
取材協力:Kさん(製造工場 代表)
